ベストゴール



2002W杯での鈴木のゴールが、日本に勇気を与えたことは書いた。

それでは、大会のベストゴールはどのゴールだったか。

独断と偏見で書かせてもらえば、決勝トーナメントのブラジルvsイングランド。ブラジルの1点目、リバウドのゴールだ。
もっと正確に言うと、ゴールそのものよりもそれを演出したロナウジーニョのドリブルが圧巻だった。

因縁の敵であり優勝候補筆頭でもあるアルゼンチンをこれまた因縁のベッカムのPKで下し、死のFグループを勝ち残ったイングランド。 予選大会で過去に例のないほど苦戦したが、本大会では組み合わせにも恵まれ、3戦全勝で予選リーグを勝ちあがり調子を上げてきたブラジル。 サッカーの母国と王国による事実上の決勝戦とまで言われた試合だ。
(ま、「事実上の決勝戦」ってのは、ちと疑問はあるが・・・)

とにかく注目のブラジルvsイングランド。 ベッカム人気も手伝って、確かに勢いはイングランドだ。 しかし、いい時のベッカムのクロスの精度を知っている者なら誰もが、およそ完調とは言えない今大会のベッカムのパフォーマンスと彼の異常な人気とのギャップに違和感を感じていたはずだ。 ましてやここまでのW杯での実績を見れば、ブラジルの底力に分があるのは間違いない。(少なくとも俺はそう思っていた。)そうした中で、俺は判官びいきにも似た感情でイングランドを応援していた。
(リバウドの顔が怖くて嫌いなことも、俺がどうしてもブラジルを応援できない理由なんだが・・・)

先制点はイングランドだった。ここまでの勢いそのままに、ブラジルDFのミスに乗じてオーウェンが決めた。

イングランドが勢いでいっちゃうのか?

ところが、まさにその「勢い」を止めたのがロナウジーニョだった。スピードに乗ったドリブルで持ち上がりワンフェイントでDFをかわした時、俺は思わず「うわ〜っ」と感嘆と脱帽の声を上げてしまった。

俺はそのプレーがリアルタイムの出来事ではなく、その瞬間だけ大会のドキュメンタリーを見ているような不思議な感覚におそわれた。そしてリバウドへのラストパスの時点では勝負はすでに終わっていた。

この圧倒的な存在感を持ったプレーがイングランドを飲み込み、ブラジルに勇気と絶大な自信を取り戻させた。まだ同点とは言いながら、俺にしてみりゃその後の逆転FKはおまけだった。

俺には、ロナウジーニョのあのドリブルがなかったら、ブラジルの優勝もロナウドの得点王もなかったとしか思えないんだ。

(7th Dec, 2002)


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